思葬
枯れた喉を水が流れる感覚。
手足の指先まで思い通りに動かせること。
痛みは細胞と神経の戦い。
吐き気は拒絶。
誰かを想うということ。
誰かに想われているということ。
それに気が付ける、ということ。
あー。と声を出すとそれが頭蓋骨の中で
思ったより大きく振動して
まるで自分の声じゃないみたい。
台風がきて去っていった、
ことすら知らなかったの。
イヤホンを両方の耳に突き刺して
音楽だけを最短距離で
脳みそに流し込むことを
「ダイレクトミュージック」
と呼ぶことにしたんだけど格好いい?
どうかな?
…格好よくないか。
意味分かんないかな?
…そりゃそうだよね。
全ては私と私の対話、
いや、対話ですらないか。
つまり独り言。
こんな風に独り言を残すという行為に
一体何の意味があるんだろうって
たまにどうしようもなく馬鹿馬鹿しくなって
だって面白くもないし下手くそだし
それってきっと無様だし
それでもこうして毎日言葉を紡ぐのは
笑われたら笑い返してやればいいじゃん
って君があの日笑ってくれたから。
いまの私が考えたことや感じたことを
吐き出して並べて繋ぎ合わせて
言葉にして刻み込んで残すことで
一秒後には過去になるいまを
葬ってあげることができるの。
だから私はいまを
そして多分明日も
言葉を、遺す。